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慎二2005・夏 written by 高柳和之

山田慎二くん、2005年『小学生あんざん日本一』  
【はじめに】
 当教室に通う山田慎二くん(仲本小6年)が、7月24日(日)に兵庫県姫路市で行われた全国大会『あんざんグランプリ2005』において「ジュニアあんざんチャンピオン」に輝きました。要するに、平たく言えば『小学生あんざん日本一』ということです。今までにも数々の大会で活躍してきた慎二くんですが、過去にない最高のタイトルです。ここに至るまでの最近の動向と大会の様子を記してみることにします。

【大会まで】
 まずは、小6になったばかりの4月、全大阪オープン珠算選手権大会の見学に行きました。大会が近づき、「見学に行くか?」と声をかけたところ「行ってみたい!」と答が返ってきたのです。もともと遠征には消極的であり、申込時点でも興味を示さなかっただけに予想外の返答でした。全大阪オープンでは、観客も参加できるフラッシュ暗算において、小学生最優秀(3桁15口3秒を正答)となり図書券をゲットしました。
 5月15日(日)に行われた埼玉県大会では、中・高校生や一般の選手を抑えて優勝し、「あんざんグランプリ2005」の県代表の推薦選手として全国大会の出場権を得たのです。出場が決まっても練習量を増やすわけでもなく、大会に向けての特別な練習をするわけでもなく、いつも通りの淡々としたマイペースで日々が過ぎました。5月末に行われた暗算検定試験(全国珠算教育連盟主催)では最高位の十段に合格しました。
 7月18日(祝)には、三重県松阪市で行われた「七夕そろばんワールド2005」に出場し、小6の部で総合優勝を達成しました。終了後の懇親会にも参加して楽しい一時を過ごしました。「新名さん(哲也・全大阪オープン大会満点優勝)と腕相撲をしたよ」などと喜んでいました。

【あんざんグランプリジャパン2005】
 大会の概要は下記の通りです。
■主催:日本珠算連盟
■後援:日本商工会議所、日本数学協会他
■開催日:2005年7月24日(日)
■会場:姫路商工会議所(兵庫県姫路市)
■参加者:全国より238名
 ・ジュニア部門(小学生)   109名
 ・スクール部門(中学生・高校生)81名
 ・シニア部門 (上記以外)   48名
■競技種目:下記の5種目
(1)コンピュータ暗算
(2)よみあげ暗算
(3)かけ暗算
(4)わり暗算
(5)みとり暗算
■競技方法:各種目ごとに予選、準決勝、決勝戦を行う。決勝戦は、1位に10点、2位に9点、3位に8点、4位に7点、5位に6点、6位に5点、7位に4点のポイントを与え、5種目のポイント合計により「あんざんチャンピオン」を決定する。

【大会前日】
 いよいよ、7月24日の「あんざんグランプリ2005」を迎えました。前日23日朝、私(高柳和之)と2人で新幹線で出発し昼過ぎに姫路に到着しました。私の息子の一馬(大学生)もこの大会に出場するのですが、この日は午前中に所用があり、遅れて合流することになりました。2人で昼食をすませ、駅前のホテルにチェックインした後、「姫路城を見たい」という慎二くんの希望で出かけました。駅前では到着したばかりの石川県選手団と遭遇しました。松田沙也香さんがいて「先週の七夕ワールドでの優勝おめでとうございます」と声をかけてくれました。この松田さん、翌日の大会でスクール部門(中学生・高校生)の「あんざんチャンピオン」に輝きました。
 姫路城では、三重県の磯田記子先生のグループに会いました。前週の「七夕そろばんワールド」の時にも練習会場や問題を提供いただきお世話になったのです。姫路城からはタクシーで、翌日の大会会場である姫路商工会議所へと向かいました。
 少しの間、会場で練習をしました。ロビーではノートパソコンで、インターネットのチェックをしている先生がいました。関東で大きな地震があったらしいとのことです。のぞき込むと、パソコンの画面には日本地図が出ていて各地の震度が表示されていました。その横には凡例があり、震度1〜7までが色分けされていました。それを最初に見た私、大きな勘違いをして、思わず「えーっ! 震度7!?」と叫んでしまいました。声がかなり大きかったようでロビーは騒然としました。大勢の人がパソコンの周りに集まってきてしまい、大変恥ずかしい思いをしました。まったく人騒がせなヤツで申し訳ありません。そんなハプニングもありましたが、ほどなく一馬も到着し合流しました。
 その後、一旦ホテルにもどり、シャワーを浴び、しばらくしてから夕食に出かけました。慎二くんの希望で駅前のお好み焼き店に入りました。満腹になり9時頃ホテルへともどりました。私はシングルルーム。慎二くんと一馬は相部屋です。夜は、決勝戦の問題を軽く練習しただけで、翌日に備えて早めに寝たようです。

【大会当日】
 大会当日の7月24日(日)、晴天でした。睡眠も十分で快適な朝を迎えました。朝食を済ませ、ホテル前からタクシーで会場へと向かいました。会場には各地の大会でお馴染みの選手や先生方がたくさん集まっています。慎二くんの応援団も到着しました。両親と祖父母です。母親が神戸出身であり祖父母は現在も神戸在住です。早起きして駆けつけてきたのです。こうした身内の応援も、目には見えない大きなパワーとなったことでしょう。
 会場には観客席が少ないため、ロビーに設置されたモニターに競技会場の様子が映し出されています。午前中は各競技の予選と準決勝が進みますが画面上の動きが少なく、見ていて楽しいとはいえません。選手たちの多くは必死に問題に取り組んでいることを考えると、少しばかり申し訳ない気持ちになります。
 「あんざんチャンピオン」になることなど、まったく予想もしておらず気楽に臨んだ大会です。決勝進出者は各種目10名ということでしたが、本人は5種目のうち3〜4種目は決勝に出られるかもしれないと思っていた程度でした。
 予選と準決勝が終わり、慎二くんと会って話したところ、なんと「5種目とも決勝に残れた」とのことでした。これは予想外に上出来です。

【優勝予想】
 中学生や高校生、あるいは一般部門は過去の多くの大会の結果等により、ある程度の競技展開や予想を立てることもできるのですが、過去のデータの少ない小学生部門は予想がつきにくいのです。それでも強いて強豪の名前を挙げると、かつて「全国そろばんコンクール」で優勝経験のある今村愛さん(大分・小6)、4月に行われた「全大阪オープン珠算選手権大会」で小学生最優秀となった桝田香代子さん(石川・小5)などでしょうか。前週の「七夕そろばんワールド」で優勝した慎二くんも候補の一人なのかもしれません。

【第1種目:コンピュータ暗算】
 午後からの決勝戦、最初の種目は「コンピュータ暗算」です。一般的にはフラッシュ暗算として知られています。3桁15口の問題が3秒台で表示されます。1題ごとにタイムが短くなり、間違えた時点で失格になるという勝ち残り方式です。3.4秒の問題で正答を得たのは桝田さんと慎二くんの2人だけ。その後3.3秒と3.2秒は両者正答し、迎えた3.1秒、この問題で慎二くんただ一人が正答し優勝しました。この競技の直前に、公開検定試験と称して土屋宏明名人(大1・宮城)が選手や観客の前で十段位(3桁15口3秒)に挑戦し、10題全問正答をしました。選手席で一緒に計算していた慎二くんは「ボクも10問全部合ってた」と言ってましたので、優勝の決まった3.1秒はまだ少しは余裕があったのでしょう。幸先よく10ポイント(以下p)を獲得しました。2位の桝田さんが9p、今村さん(小6・大分)は3位で8pでした。

【第2種目:よみあげ暗算】
 続いて第2種目は「よみあげ暗算」。慎二くんにとってはこの種目が最難関であり、決勝に進めたこと自体がラッキーでした。実力的には10名中の下位であることは間違いありません。案の定、7桁の問題でミスをしてしまいました。しかし、ラッキーは続きます。正答者が今村さんと新垣宏哉くん(沖縄・小5)の2名だったため、間違えた選手全員が3位タイということで8pを得られたのです。ここで、もしかしたら・・・・もしかするかも、という気持ちが芽生えてきたかもしれません。2種目が終わったところで、慎二くん18p、今村さん18p、桝田さん17pとなりました。3名が1p差にひしめく大接戦です。勝負としては大変面白いのですが、関係者にとってはハラハラドキドキの展開です。良いのかどうかはわかりませんが、慎二くんも私も、こんな場面で冷静でいられるタイプなのです。

【プリント3種目は最高成績で決勝進出】
 第3種目からは、かけ暗算、わり暗算、みとり暗算のプリント問題です。決勝進出者10名が、選手や観客と対面して、横一列に並び競技を行います。中央正面の演壇上に2名、一段下がった両サイドに4名ずつです。慎二くんは何故かこれ以降の3種目とも中央の一段高いところに座っていました。後で知ったのですが、準決勝の成績上位者が演壇上の座席になるとのことです。慎二くんは、なんとプリント問題3種目をすべて最高得点で決勝に進んでいたのでした。
 競技委員の「よーい、始め!」の声で選手は計算を開始します。と同時に各選手の机上に設置された電光掲示のタイマーが一斉に作動し、秒を刻んでいきます。全問計算を終えた選手は直ちに手もとのボタンを叩きます。タイマーと連動しているボタンを叩くと計算時間が表示されます。速さを競うのはもちろんですが、それ以前に正確性が要求されます。つまり、あくまでも高得点が上位であり、同点の時のみ速い方が勝ちとなるのです。

【第3種目:かけ暗算】
 まずは「かけ暗算」です。3桁×3桁の問題が10問、制限時間は45秒です。「よーい、始め!」の声で10名の選手が一斉に計算を始めます。すると会場内は静寂に包まれます。観客の目は選手の持つ鉛筆の先に集中します。そして、緊張した空気を破ったのは、慎二くんの「ハイッ!」という声でした。タイムは最速の22秒。数秒おいて「ハイッ!」「ハイッ!」・・・・と他の選手の計算も終了していきます。審査の結果、慎二くんは全問正答で文句なしの優勝です。ここで10pを加え28p、今村さんは4位で7pを加え25pとなりました。桝田さんは計算ミスがあり、この種目でポイントを得られず17pのままです。ミスをすると優勝争いからは脱落することになります。

【第4種目:わり暗算・・・・・・のはずが?】
 続いて第4種目の「わり暗算」、問題は「6桁÷3桁」が10題、45秒です。慎二くんの得意種目ですが、一瞬のミスで大きく順位を下げることも考えられます。残り2種目ということでゴールが見えてきただけに邪念も入り、精神的なプレッシャーもかかる場面です。「よーい、始め!」で競技が始まりました。慎二くんの答を書く様子を遠くから見ていた私の目に信じられない光景が飛び込んできました。10題中2番の問題で答を書く鉛筆が止まったのです。2〜3秒考えてしまい書き直しをしていました。このレベルになると、答はほとんど書きっぱなしでないと勝てません。つっかえたらほぼ絶望です。短距離走で転ぶようなものなのです。その後、かろうじて立ち直り答を書き続けましたが、他の選手が次々に計算を終えてしまいました。後半部分で再び考え込み鉛筆が止まってしまった慎二くん。力なくボタンをたたいたのは最下位に近かったようです。順調ならば15秒とかからないところを30数秒かかりました。肝心な場面で致命的なミスを冒してしまいました。人生にしても、珠算競技にしてもなかなか思い通りにはならないのです。こうした試練を糧にしていくのが常なのです。日本一決定戦の場に立てたということ自体に価値があるのです。勝負だけを考えたら負けであり残念なことは事実ですが、納得することも必要です。そんなことを考えていた私です。
 ところが世の中、何が起こるかわからないものです。審査の途中で、なんと「わり暗算」の問題にミスがあったことが判明しました。本来あってはならないことであり、めったにあることでもありません。競技委員から、「ただいまの競技は無効で、やり直しをします」とのアナウンスがありました。何という強運なのでしょう。まだ神様から見放されていませんでした。結局、問題を準備する都合があり、「わり暗算」は後回しとなり、「みとり暗算」を先に行うこととなりました。

【第4種目:みとり暗算】
 「みとり暗算」は、4〜5桁10口5題、45秒です。再び集中力を研ぎ澄ました慎二くん。全選手の中で1番速く計算を終えました。2番に終えたのは今村さんでした。先ほどの悪夢の「わり暗算」から解放され調子を取り戻したかにみえましたが、この日の最大の落とし穴が待ちかまえていたのです。審査の結果、慎二くんに1問のミスがあったのです。それも正答と1違いでした。いくら惜しくてもオマケはありません。トップを行く慎二くんがミスしたことで会場はどよめきました。対する今村さんは堂々の満点。結局満点が6名おり、それぞれ10pから5pを獲得しました。慎二くんは7位となり4pでした。ここへ来てのミスは、許されることではありません。まさに致命傷です。

【自力優勝の可能性がなくなった!】
 最終種目を前に、絶体絶命の窮地に追い込まれてしまいました。ここまで慎二くんと今村さんが2種目ずつの優勝を分け合っていますが、今村さん35pに対し、慎二くんは32pとなりました。仮に、最終種目の「わり暗算」で慎二くんが優勝しても、今村さんが3位以内ならば、ポイントで追いつきません。自力優勝はなくなったのです。
いくらミスを悔やんでも仕方ありません。1題の問題の重みを、身を持って感じることができただけでも大きな収穫です。しかし、ビッグタイトルを獲得するチャンスはそう何度も訪れるものでもありません。勝てるチャンスを逃してしまうと勝てなくなってしまうのです。
 何を言っても始まりません。この場においてできることは、とにかく、最後の「わり暗算」を全力で行い、最後をキッチリと締めくくることだけです。「人事を尽くして天命を待つ」ということ以外に道はないのです。
 考えてみれば、優勝を狙って出場したわけではありません。3〜4種目で決勝に残ることが目標だったのですが、競技が進行するうちについつい欲が出てしまったのです。
 私は、勝つに越したことはないけれど、勝てなければそれもまた仕方のないことだと考えます。勝つことへの執念に欠けていて勝負師としては失格だ言われればその通りです。恐らく慎二くんも同じような心境だったのではないかと思います。

【第5種目:わり暗算】
 競技は容赦なく続行し、いよいよ最終種目の「わり暗算」を迎えました。開始の合図を前に、置かれている立場は十分に承知していながら、いつもと変わらぬ様子の慎二くんです。「始め!」の声とともに、猛スピードで答を書き始めた慎二くん、今度は一度も鉛筆が止まることなく答を書き続けました。そして、「ハイッ!」。タイムは断然トップの11秒でした。0.1秒を競うこの種目で2位は14秒台でしたので大差です。そして、どうしても気になるのは今村さんの計算順位ですが・・・・結果は意外にも7位でした。もしかしたら、という可能性がここで蘇ったのです。
さぁ、審査の結果待ちです。慎二くんにミスがあれば、もちろん優勝はノーチャンスです。仮に計算が合っていても、高速で書いた数字が正しく判読されなければ誤答と同じあつかいになってしまいます。ちなみに総合ポイントで同点の場合は、優勝種目の多い(高いポイントの多い)方の選手の勝ちとなります。

【ラッキーな逆転優勝!】
 様々な想定が頭の中を駆けめぐっているうちに審査が終わり、いよいよ結果の発表の時がきました。計算速度の順に得点を聞いていきます。選手の前には「○」と「×」の木製の札が置いてあり、それを持って挙げるのです。司会者から「計算速度1位の山田選手!」という呼びかけ・・・・、右手に持った「○」の札が高々と挙がりました。会場から大きな拍手が湧きました。10p獲得です。しかし、まだ総合優勝が決まったわけではありません。計算速度で今村さんを上回った2位から6位の選手にミスがあれば今村さんのポイントが高くなるからです。続いて、「2位の選手」・・・・「○」、「3位の選手は」・・・・「○」。
 この瞬間、慎二くんの総合優勝が決まりました。誰もミスがなかったため、今村さんは7位で4pでした。結局、トータルでは、慎二くん42pに対し、今村さん39pという最終結果でした。大逆転です。
 文章にしてしまうと、迫力が伝わりませんが、1種目ごとに目まぐるしく順位の変わる大激戦でした。勝負としてみた場合、これほど手に汗握る名勝負はめったにお目にかかれないのではないかと思います。大変素晴らしいドラマを、当事者の一人として間近で見ることができました。今村さんにも、心から大きな拍手を送りたいと思います。

【山田家の人々】
 慎二くんは、3人姉兄の末っ子です。姉・兄ともかつて埼玉県代表として「そろばんグランプリジャパン」への出場経験があります。
 お父様は転勤のあるお仕事ですが、そろばんがあるために家族を浦和に残しての単身赴任の生活が長く続きました。お母様は大変明るく、いつも元気一杯です。当教室で年に数回行う保護者会は、昼の部は比較的真面目に行うのですが、夜の部はドンチャン騒ぎとなります。日付が変わっても終わらずに大いに盛り上がるのが通例ですが、いつも最後まで残って後片付けまでしてくれるのが慎二くんのお母様です。
 午後からの決勝戦は、会場外のモニターを通してではなく、競技会場内での生観戦でしたが、両親と祖父母の前で最高のパフォーマンスを見せてくれた慎二くんでした。
【参考】成績表
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【オマケ・もう一つの栄冠なるか?】
 8月8日(月)、青森県十和田市で全日本珠算選手権大会が行われました。こちらは全国珠算教育連盟主催によるもので、慎二くんもこの大会に参加しました。7月18日の三重県松阪市、7月24日の兵庫県姫路市に次いで、この夏3度目の遠征です。この大会後の8月11日〜14日には、東京都奥多摩で行われる当教室の3泊4日の合宿にも参加するため、かなりのハードスケジュールです。

【8月7日・全日本選手権大会前日】
 大会前日の7日に十和田入りし、午後は会場である十和田市民体育館の下見に行き公開練習に参加しました。大勢の方から姫路での優勝に関するお祝いの言葉をいただきました。
 夜の食事の時、同じ店で偶然に北海道選手団と会いました。そしてその中にいたのが慎二くんの最大のライバルである中村卓磨くん(小6・札幌)でした。姫路の大会には参加していませんでしたが、月刊サンライズ主催の通信競技会アバカスサーキットでは小2の頃から毎月のように二人でトップ争いをしています。4歳から始めた中村くんを小1から始めた慎二くんが追いかけるという図式です。5年越しのライバルとの初対面が実現しました。中村くんが小3からこの全日本選手権に参加しているのに対し、慎二くんは今回が初出場です。また、中村くんを指導している加藤孝幸先生は、大学卒業後に埼玉県にお住まいの時期がありましたが、故郷札幌に戻ってそろばんの先生になりました。加藤先生が埼玉在住の頃に、私は一緒に全日本選手権に出場したことがあり、それ以来の友人です。
 中村くんと慎二くんの思いがけない場所での初対面となりましたが、翌日のお互いの健闘を祈って別れました。

【フラッシュ暗算・小学生の部】
 全日本選手権大会は小学生部門が設けられていないため、高校生や一般の選手が上位を占めることは容易に予想されます。小学生にとっては日本のトップクラスの選手たちと同条件で競える数少ない機会です。
 14桁とか15桁という読上暗算、読み上げる速度が秒速5字前後の読上算など、さすがに小学生はお手上げです。そして迎えたフラッシュ暗算でした。
 司会者から「テレビ局から『小学生のフラッシュ暗算チャンピオン』に出演要請が来ています。したがいまして、特別に小学生のチャンピオンを決めます」とのアナウンスがありました。
 問題は姫路の大会と同じ3桁15口で進められました。3秒台後半では多数の選手が勝ち残っていましたが、3秒台前半になると正答できる選手が急激に少なくなります。姫路で優勝の決まった3.1秒でも数名の小学生が残っています。しかし、続く3秒の問題で小学生の正答者が2名になりました。一人は慎二くん、そしてもう一人は前夜初対面のライバル中村くんでした。0.1秒の差は見ているだけでは大差がありませんが、限界近くになっての0.1秒は技術的にも精神的にも大変なプレッシャーなのです。
 競技は続行されます。二人の対決は2秒台に突入しました。慎二くんにとっては未体験ゾーンです。まずは、2.9秒の問題。司会者の「正答の選手は答案用紙を持って挙手してください」の声に、両者が高々と手を挙げました。続いて2.8秒の問題。最前列に位置する中村くんは、数列後ろの座席の慎二くんが気になる様子です。答を書き終えるとすぐに振り返って表情をうかがいます。この問題、慎二くんは答えを書けませんでした。しかし、中村くんも正答を得られなかったため決着はつかず。続いてもう1問、2.8秒。今度は中村くんが答を書けず。答を書いた慎二くんも間違っており、ここでも優勝は決まりませんでした。2.8秒で2題とも両者ができなかったため、競技委員から「それでは2.9秒に戻します」との案内。この2.9秒は両者正解でした。実力伯仲の対決はどちらが勝つかまったく予想がつきません。
 しかし、とうとう熱戦に終止符が打たれる時がきました。「次は3桁20口4秒で行います」とのアナウンス。15口3秒と比べると表示のペースこそ同じですが、難易度は大きく違います。正面の大スクリーンに映される問題を凝視する二人。そして、4秒間の緊張の時間が解けました。いよいよ結果の発表です。「正答の選手は・・・・」、慎二くんの右手が挙がったのでした。なんと勝負強いのでしょう。
 見事優勝した慎二くん、終了後には女子中学生の選手たちに囲まれ、ツーショットの写真をせがまれたり、サインを求められたり(姫路のときもそうでした)、住所を聞かれたりと大人気でした。なれぬことに戸惑い、恥ずかしがると、それがまた「カワイイーッ!」と言われてしまうのです。

【テレビ出演】
 『フラッシュ暗算小学生日本一』の称号を得てのテレビ出演が実現することになりました。小2の頃から、何度かテレビ出演の経験のある慎二くんですが、今回は日曜日朝の『ポケモンサンデー』(テレビ東京系列)という子ども向け番組です。8月18日に都内にて収録。番組リニューアルのため放映はしばらく先になります。10月中旬あたりになるとのことです。
 以上、山田慎二くんの「2005夏」のレポートでした。

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